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「キャッシュレス決済に関するアンケート調査」結果

2021.07.02

株式会社日本統計センターでは、自主研究の一環として「キャッシュレス決済に関するアンケート調査」をWEBアンケートにて実施しました。今回は、アンケート調査結果に加え、国内外のキャッシュレス決済の動向についてもみていきたいと思います。

日本のキャッシュレス決済比率は26.8%。将来的には80%を目標とする

昨今、急速に普及・推進がされてきたイメージのあるキャッシュレス決済ですが、日本では2019年時点で26.8%のキャッシュレス決済比率(出典:「一般社団法人キャッシュレス推進協議会」)を2025年までに40%程度、将来的には80%程度にすることを目標に掲げています(出典:「キャッシュレスの現状及び意義」(経済産業省))。
※ キャッシュレス決済比率=キャッシュレス支払手段による年間支払金額÷国の家計最終消費支出

キャッシュレス決済を推進する理由は?

なぜ日本では、国での目標値を掲げ、キャッシュレス決済の推進に力を入れているのでしょうか。

まず初めに、世界主要国におけるキャッシュレス決済状況をみてみましょう。2018年時点でのキャッシュレス決済比率についてみると(図1)、お隣の韓国が94.7%と世界の中でもかなり高い水準であることがわかります。
また、中国も77.3%で、アジア2国が高い比率となっている一方、日本は2018年時点では24.2%と世界主要国のなかでもかなり低い比率となっており、キャッシュレス決済があまり浸透していないことがわかります。
筆者はこれを見たとき、世界と比較してこんなにもキャッシュレス化が遅れているのか、逆に、他国ではこんなにも進んでいたのか、と衝撃を受けました。

ちなみに、キャッシュレス決済比率が驚異の94.7%という韓国ですが、なぜこんなに高くなっているのか、少し調べてみました。
経済産業省が公表している「キャッシュレス・ビジョン」では、韓国におけるキャッシュレス推進事例が記載されています。韓国では、政府によってクレジットカード利用促進策として、以下の取組がされていました。

施策1.「年間クレジットカード利用額の20%の所得控除(上限30万円)」

施策2.「宝くじの権利付与(1,000円以上利用で毎月行われる当選金1億8千万円の宝くじ参加権の付与)」

施策3.「店舗でのクレジットカード取扱義務付け」(年商 240 万円以上の店舗 が対象)

この施策の結果、1999年から2002年にかけて、クレジットカード発行枚数は2.7倍、クレジットカード利用金額は6.9倍に増加したとのことです。
クレジットカードを使わなければとんでもない損だ!と、国民が感じるような施策なので、利用者が一気に増加したことも頷ける気がします。

図1:世界主要国のキャッシュレス決済比率(2018年)

出典:「一般社団法人キャッシュレス推進協議会」
※ 中国に関しては、Euromonitor Internationalより参考値として記載した数値

経済産業省が公表している「キャッシュレスの現状及び意義」のなかでは、キャッシュレス推進の意義・メリットとして大きく以下3点が記載されています。

1.消費者の利便性の向上
⇒ 手ぶらで買い物ができるようになる、消費履歴の管理が簡単になる、カード紛失・盗難時の被害リスクが低くなる

2.店舗の効率化・売上拡大
⇒ レジ締めの作業時間短縮、売上金紛失・盗難等のトラブル減少、現金の搬出入回数の減少などによる現金管理の手間の削減、訪日外国人の支払い方法ニーズへの対応によるインバウンド需要の取り込みから売り上げ拡大

3.データの活用
⇒ 個人の購買情報を分析・利活用することで、マーケティングやターゲット層向けの商品・サービス開発が可能

キャッシュレス決済には上記のような効果が期待できるとして、日本ではキャッシュレス決済の推進に向け、キャッシュレス・ポイント還元事業など様々な取組が行われています。 取組の効果もあってか、近年では日本におけるキャッシュレス比率は上昇傾向にあるようです(図2)。

図2:日本におけるキャッシュレス支払額と民間最終消費支出に占める比率の推移

出典:「キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会 第二回資料」(経済産業省)

アンケート調査結果

さて、国内外のキャッシュレス決済の動向や日本におけるキャッシュレス決済推進の取組状況などについて簡単に触れてきましたが、ここからは、当社で実施した「キャッシュレス決済に関するアンケート調査」の結果についてみていきたいと思います。
少しずつ普及が進んできているキャッシュレス決済ですが、アンケートにお答えいただいた皆様の状況はどうなっているでしょうか。

アンケート調査概要

 調査期間:2021年4月23日~2021年5月21日

 調査対象:当社GISマッピングサービス<47maps>の公式twitterアカウントフォロワー等

 回 収 数:162名

 調査方法:WEBアンケート

 集計結果についての注意点:性別、年代別などのクロス集計結果については、サンプル数が少ないため参考値としてみてください。

店舗で利用する決済手段は、「現金」が約5割と半数を占める

店舗においてメインで利用している支払い方法については、「現金」が48.8%で最も高く、現金払いを主としている人が多い結果となりました。
キャッシュレス決済では、「クレジットカード」が20.4%で最も高く、次いで「QRコード決済」が17.3%と、それぞれ2割程度となっており、CMや広告、ポイント還元キャンペーンなどが多く実施されている「QRコード決済」が「電子マネー」(13.6%)を上回る結果となりました。

図3:普段、店舗においてメインで利用している支払い方法

性別では、「現金」「クレジットカード」の利用率は男性よりも女性で高く、特に女性は「現金」が60.0%と高くなっています。また女性では、「電子マネー」「QRコード決済」がそれぞれ1割未満と低くなっています。
年代別では、50歳代でキャッシュレス決済をメインで利用している人(現金をメインで利用している人以外の合計)が64.1%で、全ての年代の中で最も高い結果となりました。

表1:性別、年代別、普段、店舗においてメインで利用している支払い方法

キャッシュレス決済を利用しない理由は、「お金を使いすぎてしまいそうだから(管理が難しいから)」が6割以上。今後、キャッシュレス決済の利用意向がある人は約7割

現金をメインで利用している人に対して、キャッシュレス決済を利用しない理由をたずねたところ、「お金を使いすぎてしまいそうだから(管理が難しいから)」が64.6%で最も高くなっています。性別にみると女性で70.0%、年代別にみると10・20歳代で80.0%と特に高くなっています。若い人ほど、お金の自己管理ができそうにないという理由から、キャッシュレス決済の利用に踏み込めていないという人が多いのでしょうか。

表2:性別、年代別、キャッシュレス決済を利用しない理由

しかしながら、現金をメインで利用している人の今後のキャッシュレス決済の利用意向は、「近日中に利用する予定」が20.3%、「今後、利用を検討したい」が51.9%と、約7割の人に利用意向があり、今後キャッシュレス決済の利用者が増加する可能性も大いに考えられそうです。
お金の管理が難しいからとしている人についても、今後の利用意向は高くなっているため、キャッシュレス決済に対する抵抗感は低いことが考えられます。
参考値とはなりますが、「どのサービスを利用すればいいか分からない(種類が多いため)」、「キャッシュレス決済を利用できる店舗での買い物頻度が低いから」、「新たなサービスを利用するのが面倒だから」といった理由からキャッシュレス決済を利用していない人たちについても今後の利用意向は高くなっているため、サービスの明瞭性や利便性などを高めることが、キャッシュレス決済利用者の増加につながることも考えられます。

表3:キャッシュレス決済を利用しない理由別、今後のキャッシュレス決済の利用意向

キャッシュレス決済を利用している理由は、「会計をスムーズに行えるから」「ポイントがたくさん貯まるから」「会計の際に現金を出すのが面倒だから」が上位を占める

キャッシュレス決済をメインで利用している人に対して、その理由をたずねたところ、「会計をスムーズに行えるから」が73.5%で最も高く、次いで「ポイントがたくさん貯まるから」が66.3%、「会計の際に現金を出すのが面倒だから」が54.2%、「現金を引き出すのが面倒だから」が37.3%となっており、ポイントの獲得の他、会計や現金引き出しの煩わしさが解消されるといった理由からキャッシュレス決済を利用しているという人が多くなっています。
性別にみると、「ポイントがたくさん貯まるから」については、男性で58.7%であるのに対し、女性では90.0%と、ポイント獲得に対する意識に違いがみられました。

表4:キャッシュレス決済を利用している理由

利用店舗ごとに支払い方法は異なっており、高額な商品の購入が考えられる店舗では「クレジットカード」、コンビニでは「電子マネー」「QRコード決済」利用者が多い傾向

利用店舗ごとに、よく利用する決済手段をたずねたところ、利用店舗によって支払い方法に違いがみられました。「スーパー、食料品店」「レストラン、喫茶店」など7つの店舗では、「現金」による支払いをするという人の割合がそれぞれ最も高くなっている一方で、「百貨店、ショッピングセンター」「家電量販店」「衣料品店、服飾雑貨店」など、支払が高額になる可能性のある店舗では「クレジットカード」を利用している人がそれぞれ5割以上と高い傾向となりました。また、メインの決済手段としての利用率が全体で1~2割程度の電子マネー、QRコード決済については、「コンビニ」での利用率が「電子マネー」25.9%、「QRコード決済」30.9%と高くなっています。

図4:利用店舗ごとの支払い方法

表5は、メインで利用している支払い方法別に、各店舗で第1位の支払い方法を抜粋した表になります。メインで利用している支払い方法と、各店舗での支払い方法第1位の項目が異なっているパターンをオレンジで塗りつぶしています。

★メインの支払い方法以外での支払いが1位の店舗数(オレンジで塗りつぶした箇所の数)

 メインの支払い方法が現金・・・1店舗

 メインの支払い方法がクレジットカード・・・3店舗

 メインの支払い方法が電子マネー・・・7店舗

 メインの支払い方法がQRコード決済・・・6店舗

電子マネー、QRコード決済をメインで利用している人については、それ以外での方法による支払いが多くなっていることがわかります。

詳細をみてみると、「病院、クリニック」「タクシー」では、普段の支払い方法にかかわらず、現金での支払いをしている人の割合が高くなっています。特に「病院、クリニック」に関しては、普段いずれの支払い方法を利用している人でも、現金での支払いをしている人の割合が最も高くなっています。
また、普段「電子マネー」「QRコード決済」を利用している人についてはメインの支払い方法とは異なった支払い方法を利用している人が多くなっていることからも、特定のキャッシュレス決済に対応していない店舗・業態も存在する事が考えられるため、キャッシュレス決済を普及していくにあたって、各店舗でのキャッシュレス決済への対応も必要であることが考えられます。

その他の着目点として、メインの支払い方法が現金の人について「家電量販店」での支払いがクレジットカードが1位となっている点です。その他の店舗では、全て現金での支払いが1位となっていますが、どのような理由が考えられるでしょうか。

 1.高額商品の購入機会も多いことが考えられるため、クレジットカードを利用している

 2.利用店舗ごとに発行されるクレジットカードを使用することで、ポイント還元などを受けることができるため

上記のような理由が考えられるのではないでしょうか。2の理由の人が多いようであれば、現金利用者にとってもポイント付与などはメリットとして感じられている可能性があります。キャッシュレス決済の普及にあたり、利用者側がメリットとして感じられるような特典の付与・認知も必要である可能性も考えられます。

表5:メインで利用している支払い方法別、利用店舗での支払い方法(1位のみ抜粋)

日本ではなぜ、キャッシュレス決済の普及が遅れているのか

最後に、なぜ日本では世界主要国と比較してキャッシュレス決済の普及が遅れているのか、についてみていきたいと思います。
経済産業省が公表している「キャッシュレス・ビジョン」の中では、キャッシュレスが普及しにくい背景認識として、「社会情勢」「実店舗」「消費者」「支払サービス事業者」の観点から考察されています。
社会情勢に関しては、以下の4点があげられていました。

(1)盗難の少なさや、現金を落としても返ってくると言われる「治安の良さ」

(2)きれいな紙幣と偽札の流通が少なく、「現金に対する高い信頼」

(3)店舗等の「POS(レジ)の処理が高速かつ正確」であり、店頭での現金取扱いの煩雑さが少ない

(4)ATMの利便性が高く「現金の入手が容易」

とても日本らしい理由だと、個人的には思いました。キャッシュレス決済はお得や便利が多くあることも事実ですが、現金を利用していて不便に感じることは日本ではあまりないということも、また1つの事実としてあり、日本人になかなかキャッシュレス決済が浸透しない理由の1つとして考えられそうです。

実店舗、消費者については以下の記載がありました。

 実店舗・・・端末導入や運用・維持など、現金支払いでは発生しないコストなどの影響

 消費者・・・キャッシュレス決済に対応していない実店舗等の存在、キャッシュレス支払にまつわる各種不安

筆者は普段、QRコード決済をメインの支払い方法として利用していますが、利用を開始した1年ほど前は、まだまだ対応している店舗が少なく、やむなく現金で支払い、ということもしばしばありました。現在は、QRコード決済に対応している店舗も増えてきているという印象で、利用機会も以前より増加しています。

上記などの理由も含め日本ではキャッシュレス決済の普及が遅れ気味とのことでしたが、国をあげてキャッシュレスの普及に取り組んでいることからも、今後は更に利用者も利用しやすい環境が整備されていくことが考えられます。また、人口の多い中高年齢者のキャッシュレス利用を促進することで、日本のキャッシュレス比率を更に高めることにつながると考えられます。参考値になりますが、キャッシュレス決済を利用しない理由について、40歳代以上で「新たなサービスを利用するのが面倒だから」の割合が、10・20歳代、30歳代よりも高くなっていることから(表2参照)、面倒くささの解消、中高齢者にとってのインセンティブの付与などなどの対策も必要になると考えられます。
お金の管理やサービスの良し悪しなど検討事項はあるかもしれませんが、キャッシュレス決済はとても便利なツールだと思います。まだ、利用したことない方は、是非一度、試してみるのもいいかと思います。

最後に、当社で実施しました「キャッシュレス決済に関するアンケート調査」にご協力いただいた皆様、お忙しい中、誠にありがとうございました。
重ねて、お礼申し上げます。

<参考資料>

「キャッシュレス・ロードマップ 2021」(一般社団法人キャッシュレス推進協議会)
https://www.paymentsjapan.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2021/05/roadmap2021.pd

「キャッシュレスの現状及び意義」(経済産業省 商務・サービスグループ キャッシュレス推進室)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/cashless/image_pdf_movie/about_cashless.pdf

「キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会 第二回資料」(経済産業省 商務・サービスグループ キャッシュレス推進室)
https://www.meti.go.jp/press/2020/06/20200626014/20200626014-3.pdf

「キャッシュレス・ビジョン」(経済産業省 商務・サービスグループ 消費・流通政策課)
https://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180411001/20180411001-1.pdf

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